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Tax & Accounting Blog

TPP11と自動車メーカーへの影響

Hoon Sung Blog, Global Trade, ONESOURCE March 26, 2018

貿易や関税の分野で数多くのニュースが発生する中、「包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定」(CPTPP)、いわゆるTPP11が2018年3月8日に署名されました。署名国のうち6か国以上が国内の批准手続きを完了した後、2018年末近くか2019年の早い時期に発効する見通しです。

CPTPPは待ち望まれていたメガFTAの一つで、世界のGDPの13%近くを占める11か国で貿易障壁が引き下げられます。加盟国は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムです。

一部のメンバー国には2国間あるいは多国間のFTAがすでに存在していますが、新しいFTAの枠組みによってアジアやアメリカ大陸の国々に新しい市場が開かれることになります。

当初のTPPと比べると、CPTPPでは一部の規定が凍結されています。しかし大半の章や付属文書は変わっていません。[1] CPTPPは、メンバー国間の障壁引き下げや貿易促進の多様な要素を引き続き備えており、企業は、TPPと同じ関税引き下げ率や、自己証明の原産地証明書などによる貿易促進、急送貨物、累積原産地規則に関する原産地規則の統一ルールを享受できます。

特に、原産地規則(ROO)および原産地手続きの章[2] 、それに特定の自動車および自動車関連部品の品目別原産地規則に関する規定[3] は変更されていません。

この記事では、原産地決定を巡ってCPTPPが採用した主要なルールと考え方、特に自動車業界にとって重要な部分を紹介します。

1. 域内付加価値(「RVC」)について追加された原産地計算方式
- 純費用方式(自動車製品のみ)
o 純費用に含めるべきものや純費用配分方法について明確に定義されています
o 自動車生産者と自動車材料生産者には異なる平均化法が適用されます

- 重点価額方式(特定の自動車製品)
o 特定の「品目別規則」(PSR)では、「非原産材料価額」(VNM)の全面適用に代わって、「特定の非原産材料価額」(FVNM)が計算に使われます
o 重点価額方式が利用できる各PSRは、その対象として認められる材料がHSコードとRVC比率によって特定されています
o FVNMの額はVNMよりも常に小さいので、重点価額方式は原産地適格と認められやすくなります

2. 付属文書1から付属文書3-D:一定の自動車と自動車部品の原産地PSRに関連する

端的に言えば、一定の自動車や自動車部品の生産者は、製品生産のために使った材料の原産地を決定する際に、PSRだけでなく、生産工程の組み合わせも利用できます。

生産工程の組み合わせの種類は表Bで定義されています。さらに協定は「複雑な」工程について定義を明らかにし、注釈でどのような工程が複雑な工程とみなされないかを示しています。

- 特定の自動車(8701.10から8701.30あるいは87.02から87.05)の生産者
o 特定の自動車の生産に使われる表Aで定義される材料の原産地を決定するとき
o それらの材料が、表Bで定義される1つまたは2つ以上の工程で生産される場合は、原産品とみなされます
o あるいは、別の選択肢として表Aの材料のPSRを利用することもできます

- 自動車部品の生産者(表Cに掲げた製品の生産者)
o 表Cに掲げた製品の生産に使われる材料の原産地を決定するとき
o それらの材料が、表Bで定義される1つまたは2つ以上の工程で生産される場合は原産品とみなされ、その原産品は表Cに掲げられる積み上げ/控除方式の価額あるいは製品の費用(純費用)の閾(いき)値までカウントすることができます
o あるいは、別の選択肢として材料のPSRを利用することもできます

この規定により原産地算定で生産者がメリットを受ける一例を以下に示します。
8407.33の生産者、87類のピストンエンジン
販売価額 = 10,000米ドル
表Cの閾値 = 販売価額の10% = 1,000米ドル
製品のPSR = BD55

表Bの工程を考慮に入れる前 VNM:5,100米ドル(材料a + 材料b + 材料c) 製品の判断:(10,000 – 5,100)/10,000 = 49% 原産地判断:非原産品
製品のPSR = BD55

表Bの工程を考慮に入れた後
VNM:4,100*米ドル
*材料bと材料cの合計は1,100米ドルですが閾値までは原産扱いできるので、4000米ドル + 100米ドルが非原産となります
工程前の製品判断: (10,000 – 4,100)/10,000 = 59%
原産地判断:原産品

[結論]
近年のFTAの内容からも予想されたように、CPTPPは加盟国で生産された製品を原産品とみなす追加的なツールが盛り込まれています。自動車協定により分野だけに関する規定を設けることによって、主要自動車部品を加盟国から調達するよう協定は促しています。こうした規定は、進歩した紛争処理や、投資や知的財産の保護などに支えられて、地域の貿易体制にバリューチェーンをもたらすでしょう。

一つの注意点は、CPTPPは検証方法の一環として直接検証を導入しています。予想外のサプライズを防ぐため、企業は少なくとも以下のようなFTA順守業務の円滑化に着手すべきでしょう。
1) 製品や材料の分類など基本的業務を確実に行う
2) サプライヤーと十分に早くから協議し原産地の根拠を前もって整える
3) 製品が生産される国の管轄地で適用される一般に公正妥当と認められた会計原則に従ってRVCの計算に使われるすべての価額を記録し管理する

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