Binh Le  BlogGlobal TradeONESOURCE August 4, 2017

背景

日本と欧州連合(EU)の首脳は第24回ブリュッセル・サミット(2017年7月7日)において、戦略的パートナーシップ協定と経済連携協定という2つの画期的な協定について政治的合意に達しました。どちらの協定も日本とEUの両者にとって大きな利益となることが期待されます。日・EU経済連携協定は「保護主義に対抗する自由かつ公正な貿易のための戦略的パートナーシップ」の野心的で包括的な基礎となることが期待されています。[1]

EUと日本との自由貿易協定(日EU・FTA)は新世代FTAとしては3番目で、発効すれば世界GDPの3分の1を占める世界最大の開放的な経済地域となります [2]。EUと日本はそれぞれの交渉チームに対し、今回の合意内容の調整と迅速な妥結を指示しました。

両者はまた、各業界団体との綿密な協議によって残りの課題をすべて解決し、自動車の非関税措置(NTMs)に関する附属書を含むNTMの課題に関する技術的作業も完了させました。

2017年末に署名し、2018年に批准され、2019年に発効する見込みです。

日欧の自動車メーカーに与える影響

このFTAは韓国-EU FTAと多くの点で似ています。自動車のNTMに関する附属書は国連欧州経済委員会(UNECE)規制の非常に重要な部分を含んでおり、これらは日本の関連規制当局が検討中の自動車NTMリストに基づいて実施されます。このリストは、乗用車、あらゆるサイズのバスやトラックなどの商用車、オートバイを対象とします。自動車に関する附属書は、NTMの作業の完了と並んで、日本の自動車市場への参入に対するすべての規制上の障壁撤廃につながるはずです。

このFTAはまた、国際基準の使用、排出量、自動運転や電気自動車など新技術を搭載した製品、将来の要件の統合、最恵国待遇(MFN)条項、水素燃料車といった、強固なコンプライアンス条項も定めています。

さらに、日EU・FTAには10年を限度としたセーフガード条項があり、これにより、日本がUNECE規制の適用を中止、または撤廃されたNTMを再設置した場合、EUは関税を再導入することができます。約定履行の監視は自動車および部品に関する作業部会でも行われる見込みです。この作業部会は会合を少なくとも年1回開きます。


原産地規制

この協定は、原産地規制(RoO)手続きについても一章が設けられたほか、注釈、製品ごとの規則、原産地証明書の文面、アンドラとサンマリノに関する規定などを記載した附属書があります[3]

この協定と、既に発効しているほかのFTAとの間には、吸収ルールの原産品要件や属地主義の原則など、いくつかの類似点があります。 原産地の累積を除き、EU加盟国または日本から非締約国に輸出された原産品が再輸入される場合、「それらは、再輸入される産品が輸出された産品と同一であること、非締約国内または輸出中に産品を良好な状態に保存する作業以外の作業が当該原産品について行われていないことを関税当局に証明できない限り、非原産品と見なさなければならない」と定められています。

EUと日本の両者は、特定の産品が日本国外で作業や加工を施された場合、材料が日本から輸出されて後に日本に再輸入された場合であっても、協定の附属書IVに従って締約国が指定する地域で作業や加工が行われた場合には原産品と見なすことで合意しています。

WCOは特恵貿易協定を結ぶ国に対し、共同で生産し、関連する原産地規制の規定を共同で遵守することを確かに認めています。しかし、「締約国間の双務的かつ完全な累積、最終製品ではなく材料にのみ適用可能な会計の分離、製品保護作業や保管や委託販売と展示の分離など非締約国で原産品に関して行うことができる作業を定めた変更禁止規則」を認める累積規定といったいくつかの際立った条件も考慮に入れるべきです。累積規則は魅力的で可能性を広げるものですが、原産品であることの確認の証拠として供給者が提出する必要のある書類(供給者CO)も増加します。

原産品であることの確認の要求について言えば、輸入者は、特恵関税の適用を受けるには情報の提供が求められます。韓国の原産品確認手続きの要件とは異なり、この貿易協定では確認のために輸入締約国の関税当局が輸出国の輸出者または生産者を直接訪問することは認められていません。日本・EU間の相互行政支援の下で行うことになります。

品目別原産地規則(PSR)は、この協定に基づいて交渉される関税引き下げがEUの輸出者に適用されることを条件に、すべて合意に至りました。

自動車とその他の車両に関するHS第8701~8705項は、非原産原料(NOM)を自動車の工場渡し価格の45%以下と定めています。順次廃止すべきHS条項がいくつか存在します。例えば、乗用車に関するHS第8703項には、最初の3年間はNOMを55%以下、その後の3年間は50%以下とする6年間の経過措置があります。また、自動車部品に関するHS第8708項では、NOMを60%以下とする3年間の経過措置が定められています。

セシリア・マルムストローム欧州委員(貿易担当)もストックホルム商科大学での講演の締めくくりに、このFTAが発効した場合の課題について次のように述べています。「日本は、欧州でも認められた自動車に関する複数の国連国際安全基準を採用しています。この種の貿易障壁を扱うことはもちろん困難です。交渉の内容が専門的になり、また警戒措置をとる際に民主的決定を維持するよう慎重に事を運ばなければならないからです。しかし、これまで私たちが進めてきたことを見れば、そこに潜在的可能性があることが分かります。」

ONESOURCE Global Trade for FTA も併せてご覧ください。

Source:

https://www.reuters.com/article/us-japan-eu-trade-idUSKBN19R17U

http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2017/july/tradoc_155693.doc.pdf

http://trade.ec.europa.eu/doclib/press/index.cfm?id=127

http://trade.ec.europa.eu/doclib/docs/2011/october/tradoc_148303.pdf

[1] https://munir51.wordpress.com/2017/07/06/eu-japan-summit-conclusions/

[2] 発効時にEUから日本への輸入関税の91%が撤廃され、経過措置の終了時には99%となりますが、残りの輸入品(1%)は割当と関税引き下げ(農業用)によって部分的に自由化されます。関税分類品目について見ると、日本は発効時に関税分類品目の86%を完全自由化し[2]、15年後には97%まで上昇させます。EUの全体的な自由化レベルは99%に設定され、EIFでは96%を撤廃します。輸入について見ると、EUはEIFで75%しか自由化しませんが、15年間で100%に近づけます。自動車のタリフラインは7年間で完全自由化され、自動車部品は発効時から7年後まで幅があります。

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