Roy Na        BlogGlobal TradeONESOURCE  February 10, 2017

複雑な製造環境において、多くの製造会社は、輸出する最終製品に組み込む前に半組立品や中間材料を製造しています。製造工程で用いられる部品表(BOM)が何階層にも及ぶ複雑な構成になることも少なくありません。これらの中間材料が製造国の原産地規則を満たす事により、FTAを活用するための域内原産割合要件をクリアできる可能性が大幅に高まります。

ただし、誤った原産品判定による税関検認を避けるためには、十分な注意とルールの理解が必要です。本稿では、地域ごとの適用、解釈の違いを説明しながら中間材料の要点を明らかにし、この中間材料の活用を検討中の企業に最善の方法を提案します。


中間材料の概要

中間材料は、材料・半完成品の生産過程で用いられる自己生産品です。中間材料を明確にする目的は、こうした製造者の生産品とサードパーティーサプライヤーから材料・半完成品を購入した物を明確に区分けし判定する為の共通のデータを用意する事です。

吸収原則またはロールアップ原則は、産業全体で用いられているルールであり、その後の製造工程で用いられる場合に中間材料の原産資格が認められます。中間材料に含まれる非原産品はすべて、最終材料製品の原産資格割合評価時に除外されます。これによって、一般的には非原産材料は認められない中で、多くの原産品以外の投入を用いることができるため、原産地規則の縛りがやや緩やかになります。従って、自社製造会社は、中間材料活用によりFTAを活用する機会が広がります。以下にこの簡単な例を示します。


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中間材料ーFTA条件クリアの助け舟?

上の例では、FTA条件を満たすための原産地規則における当国/域内原産割合(RVC)の付加価値基準を40%と仮定しています。フラット型BOMを用いた場合、域内原産割合が30%であるため、この製品は付加価値基準に達しません。ですが、部品B-aとB-bは組み合わせて中間材料「部品B」として最終材料に用いられるため、部品B全体として合算することができ、原産割合45%ということになります。


これは極めて単純な計算であり、製造会社の立場から見ると一も二もなく魅力的に映るかもしれません。しかしながら、中間材料を用いるために守らなければならない一般原則、FTA固有原則があります。


FTAでの中間材料適用可否に関する各国の見方

中間材料に対する考え方は、国や協定によって異なり、これまでの経験や調査によると、多くの協定では中間材料の概念が言及されていません。


以下に、中間材料の適用について一般に知られている事例を示します。


北米自由貿易協定(NAFTA)

原則では、原産資格を得た中間材料に含まれる原産品以外の部品は、その後の製造工程に用いられる産品の原産資格判断に考慮できないと規定されています。関税分類の項(CTH)または号(CTSH)の大幅な変更を伴うことによって資格が認められる、複数階層での中間材料資格認定は認められています。


もう一つの制限は、NAFTAモデルにおける吸収・ロールアップ原則です。自動車への適用が除外されていることから、全製造業に制度全体として用いられる一般原則ではありません。NAFTAモデルにおける吸収・ロールアップ原則は、例外や制限があることから、原則が全品目に適用される欧州での状況と比べ、効果は少ないと言えます。


EU FTAs

欧州原産地規則における吸収原則は、例外や制限なく、EU FTA制度全体に適用されます。輸出者は、どのFTAについてもロールアップ原則を適用することができ、全品目が吸収ルールの対象となります。EU FTAにおいては、「中間材料または吸収・ロールアップ原則」は、合意事項に明記されています。


例えば、EU・コロンビア・ペルー間で締結された貿易協定の第6条「十分加工された製品(Sufficiently Worked or Processed Products)」にロールアップ原則が規定され、吸収ルールについても、EU・韓国FTAの第5(a)条「十分加工された製品」に言及があります。EU・中央アメリカ連合協定では、第5条「十分加工された製品」にロールアップ原則が言及されています。


上の例では、FTA条件を満たすための原産地規則における当国/域内原産割合(RVC)の付加価値基準を40%と仮定しています。フラット型BOMを用いた場合、域内原産割合が30%であるため、この製品は付加価値基準に達しません。ですが、部品B-aとB-bは組み合わせて中間材料「部品B」として最終材料に用いられるため、部品B全体として合算することができ、原産割合45%ということになります。


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