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ブロックチェーンは貿易を急進的に自動化するか

ONESOURCE Global Trade Blog, Global Trade, ONESOURCE October 20, 2017

Keith Haurieは、トムソン・ロイターONESOURCE Global Tradeビジネス開発担当バイスプレジデント

ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳技術は、金融業界ですでに広く採用され、医療、保険、法曹等のその他の業界でも急速に採用されつつあります。この技術は、近いうちに大企業の業務のあり方をダイナミックに変化させ始めると思われますが、すでに国際貿易における蓄積技術の有望な一部とみなすことができるほど十分に成熟しています。

しかし、ブロックチェーン技術がもたらし得る業務の改善を考えると、その認知度はまだ低いといえます。貿易業務部門は、ブロックチェーンの最新情報、特にこの技術が貿易業務を支援しやがて根本的に自動化する潜在力について、しっかりと把握しておくべきです。

ブロックチェーン技術の基本情報
ブロックチェーン技術はもともと、サトシ・ナカモトと名乗る個人またはグループによって、最初のデジタル通貨であるビットコインの開発を支援するために設計されました。この技術は、記録の恒久的かつ改ざん不能なリストを保持し、それらのリストをブロックにまとめ、さらにそれらのブロックをチェーンのようにつなげて、ピアツーピアのネットワークを通じて分散します。情報または台帳が変更された場合、それらの変更はブロックチェーン全体にわたって記録されます。この技術は、不正への耐性と本質的な透明性を持っています

ブロックチェーンは、暗号化の利用を通じた高水準のセキュリティを提供します。それぞれのブロックにはタイムスタンプおよび前のブロックへのリンクが割り当てられるため、すべてのトランザクションは時間順に記録され、議論の余地のないチェーンが形成されます。これは、ブロックチェーンの情報が、単に共有されるだけでなく、データの変更が発生した際に継続的に照合されることを意味します。

ブロックチェーンは公開されており、世界中に分散したコンピューター上で実行されるため、単一の集中データベースは存在しません。そのためブロックチェーン内の記録の削除、複写、変更、または改ざんは極めて困難であることから、データ・ハッキングのリスクが軽減されます。この技術の認知度が高まり始めたのは2013年であり、ブロックチェーンに依拠したデジタル通貨であるビットコインが、正体不明のハイテクの関心事から、本物の通貨に相当する価値あるコモディティとなった時のことでした。

ブロックチェーンが貿易業務部門に及ぼす影響
ブロックチェーンのトークン化およびデータ管理機能、ならびに本質的な透明性は、貿易業務部門やその業務上の関係者(規制当局、通関業者等)にとって魅力的なものです。現在のところ、国際貿易業務部門は、サプライヤーおよび規制当局との間における相互信頼関係を維持する必要があります。しかし、ブロックチェーンの記録は反論の余地がなく、かつ変更不能であるため、プラットフォームとしてのブロックチェーンは、関係者またはカウンターパーティー間の信頼や調整を要求しません。 ない場合、サプライ・チェーンはリスクにさらされ、最終的には遅延に関連するコストにさらされます。

またこの技術は、トランザクションを実質的に瞬時に認証したり、構造化されたデータを自動的に共有したりすることができます。

貿易におけるブロックチェーン技術の使用の結果として、急激なプロセスの自動化がもたらされる可能性があります。ビットコインやその他のデジタル通貨が、貨幣取引の実行に必要とされる集中的な処理機構を排除することによって摩擦を減らそうとしているのと同様に、ブロックチェーン主導の貿易は、材料や物品を安全に、迅速に、かつコンプライアンスを伴ってある場所から別の場所に移動させるために現在要求されている多くの手動プロセスの必要性を排除するかもしれません。

ただし、プラットフォームの技術的な複雑性や、その使用事例(現在の実務からの著しい脱却)の一般的な複雑性を踏まえると、貿易コンプライアンスにこの技術を導入するにあたっては、現状に対する大幅な変更が要求されると思われます。しかしながら、各国政府はこの技術に目を向け始めており、また大企業はこの技術を試行しつつあります。貿易業務部門は、ブロックチェーン技術の基本情報を理解した上で、こうした会話に参加することができます。

全体としてのブロックチェーンの潜在力を実現するためには社会的および政治的な変化が要求されると思われ、また国際貿易におけるブロックチェーンの潜在力を実現するためには、企業が自身の現在のプロセスを放棄すること、および政府が自身の権力の一部を放棄することが求められるでしょう。

貿易における真の採用に至るまでにはまだ長い道のりですが、見込みは大いにあるといえます。

本記事は、「American Shipper」 において最初に公表された記事の別版です。