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Tax & Accounting Blog

特恵関税制度のもとでの原産地規則利用率

Andre Cruz Blog, Global Trade, ONESOURCE Translated on May 30, 2018

特恵利用に関する徹底した調査と深い理解により、自由貿易協定(EPA/FTA;以降「EPA協定」と称する)の活用で得られる特恵関税に関するベストプラクティスだけでなく、その制約についても有益な洞察が得られることは疑う余地がありません。国際的な環境下で事業展開していながら特恵関税のメリットを活用していない企業がいまだ多いことから、本稿ではこの制限に特に注目します。限られた範囲でEPA協定による特恵関税を利用している企業もあり、多くの貿易統計から特恵利用が低水準であることにこの事実が表れています。

これは企業が直面するある状況下において、EPA協定活用による特恵関税の利用機会を十分に活用してはいないことを示すものです。もちろん利用率低迷の背景にある要因はさまざまです。その一つである「原産地規則の遵守」は、特恵関税を適用するうえで中心的かつ義務的な要件であることから、EPA協定利用率の低さは、原産地規則の要件が過度に厳しいことや、原産地判定を誤って輸入申告した際のコストが大きいことを示唆しているとも考えられるでしょう。

特恵利用の使用に対する制限

特恵利用は、EPA協定の対象となる輸入全体というよりも、特恵制度に基づき実際の輸入の一部に影響を与えています。EPA協定は、特恵関税マージンが実際に発生する場合にのみ利用可能です。特恵関税マージンとは、最恵国(MFN)ベースで税率0%の関税分類品目であればEPA適用は不要です。このような場合、特恵原産地規則(注1)は貿易障壁とはなりえません(注2)。結果的に、原産地規則を満たしたEPA協定の利用率算定においてMFN税率0%の場合はEPA協定活用が考慮されないということになります。

自由貿易協定(EPA/FTA)の利用に関する企業の意思決定は、主に以下の二つの要因に左右されます:

    1. 魅力:特恵関税マージン(MFN税率とEPA税率の差)が大きいほど、特恵制度に基づいて輸出し、輸入国でEPA特恵税率を活用するためのすべての条件を企業が遵守しようとする可能性が高いこと。

    2. コンプライアンス:定められた規制や手続き(特に、原産地規則の手続き的規定または製品固有の品目別原産地規則(PSR)に関するもの)のコンプライアンスに伴うコストや複雑性が高いほど、EPA協定利用を採用する意思決定は難しくなること。

コンプライアンスに関して、また特恵原産地規則が特恵利用に及ぼしうる影響に関しては、特恵付与プロセスは、以下の四つの原産地関連の要件に基づいています:

    1. コンプライアンス:原産地規則の手続規定や製品固有の品目別原産地規則を満たしている必要がある(すなわち、原産判定において実質的な変更を定義する最低限の基準)。

    2. トレーサビリティ:原産地申告は、輸出を行う対象の最終製品の製造において、輸出者以外の第三者(部品供給者など)が提供するすべての材料の原産性を追跡していなければならない。

    3. 原産地証明書:適用しようとするEPA協定が定める要件に合致する文書であること。

    4. 直接輸送:関税メリットの受益国(輸入側)に宛てて輸出品を直接輸送する(つまり、第三国を経由するなどせずに直送要件を満たす)こと。
上記四つの要件がすべて満たされるとEPA協定に適格となります。したがって、自由貿易協定の利用率が低いということは、製品が原産地ステータスを取得するための規則が過度に厳しいか、またそのプロセスを担当する人員が他の業務に割り当てられ対応ができていない場合が多いことを示しているとも考えられます。また、原産地証明書の入手にコストがかかる、情報の妥当性の精査に慎重を期している、企業が特恵関税付与国(輸入国)市場にその商品を直接輸送できないことなども背景にあるでしょう。一方、利用率が高いということは、原産地要件が貿易の妨げとならず、容易に遵守できるものであるということを意味します。

特恵利用率を測るうえでの制約

特恵原産地規則による制限は、特恵利用が進まないことの唯一の要因ではなく、あくまで要因の一つであることに注意が必要です。たとえば、特恵マージンに魅力がないためにEPA協定が利用されていないことも考えられます。つまり、MFNレートが低くなっており、EPA税率を適用する必要がないためEPA利用のインセンティブが機能しないのです。

さらに、同じ国または地域に対する特恵関税制度のさまざまな根拠法が、重複している場合があるという問題もあります。企業は、各種の特恵制度(非互恵的または互恵的など)を選ぶことができますが、それぞれの制度には異なる原産地規則が規定されています。例えば米国には「アフリカ成長機会法(AGOA)」と、一般特恵制度(US GSP)の両方が存在しており、重複の良い例と言えるでしょう。

このように、同種の優遇制度がある場合、企業は最も有利な制度に従って貿易を行うことを考え、適用できる制度の管理のしやすさとのバランスに鑑みた選択をします。結果的に、米国ではGSPに基づく特恵利用率は低くなっていますが、これは輸出企業がAGOAの利用を優先し米国GSPは受益者にとってほとんどメリットがないという誤った印象を与えるかもしれません。

同様に、オーストラリアは、オーストラリア関税特恵制度(ASTP)とASEAN-オーストラリア・ニュージーランド自由貿易協定(AANZFTA)の下、カンボジアに貿易上での特恵を付与しています。双方の制度に基づく貿易取引実態を総合的に調査しなければ、特恵貿易パターンの包括的概要は把握できないでしょう。

特恵貿易と特恵利用率

2015年以降、後発開発途上国(LDC)からの各WTO特恵付与国の総輸入額は減少しています。これは、四つの特定の条件 ― ①MFN課税あり品目(特恵不適用)、②MFN税率が0%である品目、③特別特恵受益国として指定する受益国を原産地とする産品についての特恵関税(利用する/しないのいずれか)、④「その他の」特恵制度 ― の四通り全てにおいて、世界的な輸入の大部分に見られる現象です。

コスト削減と高い効率化を考慮した輸出入管理プロセスを企業が導入できれば、収益とブランド全体の競争力向上につながります。このプロセス管理が可能なERP製品などのソリューションテクノロジーを活用することにより、効果的な貿易特恵プログラムの実行や、EPA協定活用による特恵関税制度の利用が不十分なため多くなっている流出コストを最小限にとどめることができると当社は考えます。

(注1) WTOの原産地規則委員会(2016年に採択)は、特恵関税適用による恩恵があったと「報告された」輸入額と、かかる特恵関税適用が可能であったがそうしなかったと思われる総輸入額を比較する計算方法を提示しています。

(注2) 国際貿易を制限する規制または政策(特に関税、輸入割当など)。

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