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トランプ大統領 対 アジア:貿易戦争の最新状況

Blog, Global Trade, ONESOURCE Published on July 6, 2018 | Translated on September 21, 2018

今年の初め、トランプ大統領はソーラーパネルに対して85億米ドル、および洗濯機に対して81億米ドルの保護関税を課しました。その後程なく、商務省は鉄鋼・アルミニウム製品の輸入は米国の国家安全保障上の脅威になると決定づけた報告書を公表しました。その結果として、3月23日にはトランプ大統領は、一部の国を除外対象としながらも、鉄鋼に対して25%、およびアルミニウムに対して10%の関税導入を発表しました。

関税引き上げの次なる一手として、4月3日にはアメリカ合衆国通商代表部が中国製品の関税品目案を公表しました。トランプ大統領によれば、これらの関税は彼が言うところの米国に対する中国の不公平な貿易政策に対する反応であるとしています。当初の関税リストは航空宇宙産業、ロボティクス、情報通信技術および機械などの業種を対象としていました。

6月15日、アメリカ合衆国通商代表部は中国から米国への輸入品に対する追加関税リストを公表しました。この最新リストは1,000品目以上の製品からなり、400億米ドル以上の中国からの輸入品目を網羅しています。

関税は中国から米国への輸入品のほぼ70%に課されることになり、7月6日から発効することが見込まれています。残りの30%については公開審査およびパブリックコメント期間の対象となっています。

こうした関税の引き上げにより、米国の最大の貿易相手国のいくつかにおいて報復合戦が始められたようです。

概要

2017年の米国の貿易相手上位10か国のうち4か国はアジアの国でした。以下、アジアにおける米国の貿易相手上位国のうち数か国における同規模の報復措置の動向についての概略を示します。

中国

中国は2017年に6,000億米ドル相当の貿易を行いトップに立ち、それまでカナダが保持していた記録を破り米国の貿易相手国第1位となりました。

トランプ大統領が改定通商法301条の発表を6月に行った後程なく、中国は米国の中国への輸出に対して関税を課すことで報復に出ました。中国のリストは400億米ドル以上を対象としたもので、そのうち170億米ドル近くが農産物・食品となるため米国の農家や牧場経営者が大きな影響を受けることになります。中国の関税案における追加製品には石油、医療機器、プラスチック製品および自動車の輸出などがあります。

米国の関税が中国に適用されることになる7月の日程が近づくにつれ、中国が米国製品に対する追加関税を適用することが継続する可能性があります。 

日本

トランプ大統領の鉄鋼・アルミニウム関税への報復として、日本も4億米ドルを超える米国からの輸入品に対する関税を課すことを検討しているものの、この関税案はまだ世界貿易機関(WTO)へ通知されていません。

日本はこうした関税案を適用免除国のリストに自国を加えるよう米国を説得する交渉上の作戦として利用したいと考えています。

日本は、カナダ、中国および欧州連合の報復合戦の二の舞とならないよう注意を払ってきました。しかしながら、日本の自動車製造業からの圧力が高まっていることから、6月29日に米国商務省に対する方針説明書を提出し、輸入自動車に対する関税は大きな影響を与えることになり日本の自動車関連企業が創出してきた相当数の米国人の雇用を危うくするという懸念を述べています。

インド

インドは2017年の米国の第7位の貿易相手国となっており、ダイヤモンド、金および医薬品が最大の貿易製品となっています。

米国による一部の鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税の引き上げは、インドに対して2億4,100万米ドル相当の関税の影響を与えました。トランプ大統領の鉄鋼・アルミニウムに対する関税に応える形で、インドは米国から輸入するヒヨコ豆、レンズ豆、ホウネンエビなどの物品に対する関税を引き上げました。インドによる関税案は米国に対して2億4,100万米ドルと同等の関税の影響を与えることになります。インドはWTOに対して30品目の改定リストを提出しており、関税を50%まで引き上げることを提案しています。

インドが米国の生産物に対する関税を引き上げる予定のその他の製品には、一部のナッツ類、鉄および鉄鋼製品、リンゴ、ナシ、ステンレス鋼の圧延製品などがあります。こうした関税は8月4日付で発効することが見込まれています。

欧州連合と違い、インドはオートバイの輸入は対象外としています。この点は、製造のアジアへの移転を開始した米国のオートバイメーカーのハーレーダビッドソンに対して大きな影響を与えました。

今後に向けて

トランプ大統領の貿易関税措置の一部が効力を発するにつれ、米国にとっての最大の貿易相手国の各国が更なる報復措置に打って出ると予想されます。

中国は今月、大豆に対する新たな25%の関税を適用すると見込まれています。メキシコは豚肉の輸入に対する追加関税を計画しており、欧州連合(EU)はハーレーダビッドソンのオートバイを含めた米国製品の輸出における30億米ドル以上を対象としました。

欧州委員会委員長のジャン=クロード・ユンケル氏は今月下旬にワシントンでトランプ大統領と会談を行う予定で、貿易政策と関係について更なる話し合いを持つことになります。

参考:
Peterson Institute for International Economics
“Trump, China, and Tariffs: From Soybeans to Semiconductors”
URL: https://piie.com/blogs/trade-investment-policy-watch/trump-china-and-tariffs-soybeans-semiconductors
“Is Trump In A Trade War? An Up-To-Date Guide”
URL: https://piie.com/blogs/trade-investment-policy-watch/trump-trade-war-china-date-guide

Forbes
“Top 10 U.S. Trade Partners in 2017 Can Be Broken Into 3 Tiers” By Ken Roberts
URL: https://www.forbes.com/sites/kenroberts/2018/02/28/top-10-u-s-trade-partners-in-2017-can-be-broken-into-three-tiers/#77277b62627e

Los Angeles Times
“Japan to US: Auto Tariff Would Damage US, World Economy” By: Mari Yamaguchi
URL: http://www.latimes.com/sns-bc-as–japan-us-autos-20180629-story.html